○障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に基づく職員の対応に関する要領

平成28年3月22日

訓令第7号

(目的)

第1条 この要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、職員(臨時職員及び会計年度任用職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。

(不当な差別的取扱いの禁止)

第2条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障がい(身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がいをいう。以下この要領において同じ。)を理由として、障がい者(障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下この要領において同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利及び利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。

なお、別紙中、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ。)

(合理的配慮の提供)

第3条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利及び利益を侵害することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。

(所属長等の責務)

第4条 所属長及び所属長その他課長相当職以上の者(以下「所属長等」という。)は、前2条に定める事項に関し、障がいを理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。

(1) 日常の執務を通じた指導等により、障がいを理由とする差別の解消に関し、職員の注意を喚起し、障がいを理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。

(2) 障がい者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。

(3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

2 所属長等は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。

(相談体制の整備)

第5条 職員による障がいを理由とする差別に関して、障がい者及び当該家族その他関係者からの相談等に的確に対応するため、総務課に相談窓口を設置する。

2 前項の相談窓口に寄せられた相談等については、相談者のプライバシーに配慮しつつ、福祉課及びその他関係課と情報共有を図り、対応を協議するとともに、以後の相談等において活用することとする。

3 相談等を受ける場合は、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールに加え、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して活用するものとする。

4 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。

(研修及び啓発の実施)

第6条 障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し法の趣旨の徹底や障がい者に対する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとする。

附 則

この訓令は、平成28年4月1日から施行する。

附 則(令和2年訓令第12号)

この訓令は、公布の日から施行し、令和2年4月1日から適用する。

別紙

第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方

法は、障がい者に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービス(物資や財産などの有形物や教育、福祉、医療などの無形役務)や各種機会の提供を拒否し、場所・時間帯などを制限するなど、障がい者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障がい者の権利利益を侵害することを禁止している。

ただし、障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障がい者に対する合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。

このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がい者を、問題となる事務・事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。

第2 正当な理由の判断の視点

正当な理由に相当するのは、障がい者に対して、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われるものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。

正当な理由に当たるかどうかは、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障がい者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点から、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得が得られるような客観性が必要となるものである。

職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がい者等にその理由をわかりやすく丁寧に説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。

第3 不当な差別的取扱いの具体例

不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

○障がいがあることを理由に窓口対応を拒否する。

○障がいがあることを理由に対応の順序を後回しにする。

○障がいがあることを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。

○障がいがあることを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。

○事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障がいがあることを理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。

第4 合理的配慮の基本的な考え方

1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。

法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。

合理的配慮は、障がい者が受ける制限は、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。

合理的配慮は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。

2 合理的配慮は、障がいの特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。また、求めている内容に対応できない場合においても、代替手段がないか検討することが重要である。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、状態等に配慮し、その際、相手方の意向を十分尊重するものとする。

なお、合理的配慮を必要とする障がい者が多数見込まれる場合、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。

3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。

また、障がい者からの意思表明のみでなく、知的障がいや精神障がい(発達障がいを含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障がい者の家族、介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。

なお、意思の表明が困難な障がい者が、家族、介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に則り、当該障がい者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。

4 合理的配慮は、障がい者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障がい者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障がいの状態等が変化することもあるため、特に、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

5 町がその事務・事業の一環として実施する事務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がい者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。

第5 過重な負担の基本的な考え方

過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者等にその理由をわかりやすく丁寧に説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。

○事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的、内容、機能を損なうか否か)

○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)

○費用・負担の程度

第6 合理的配慮の具体例

第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。

なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

(物理的環境への配慮の具体例)

○段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。

○配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置をわかりやすく伝える。

○目的の場所までの案内の際に、障がい者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障がい者の希望を聞いたりする。

○障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。

○介助者等が付き添う場合、本人だけでなく介助者等の席を隣に用意する。

○疲労を感じやすい障がい者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難な場合に、障がい者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。また、ついたて等の活用や設置場所を工夫するなど、プライバシー保護等の配慮を行う。

○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障がい者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。

○災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障がい者に対し、電光掲示板、手書きボード等を用いて、わかりやすく案内し誘導を図る。

○弱視の方から申し出があった際に、会場の座席位置を照明の近くなどその見え方に応じたふさわしい場所に案内する。

(意思疎通の配慮の具体例)

○筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。また、難聴の方の会議への出席が予定されている場合など、可能な範囲で、磁気誘導ループなどの補聴援助機器を用意する。

○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なりうることに留意して使用する。

○視覚障がいのある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。

○意思疎通が不得意な障がい者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。

○駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。

○書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。

○比喩表現等が苦手な障がい者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに説明する。

○障がい者から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたわかりやすい内容のメモを、必要に応じて適時に渡す。

○介助者等が付き添う場合、介助者等ではなく、本人に話をする。

○会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障がいのある出席者や知的障がいを持つ出席者等に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。

○会議の進行にあたっては、職員等が出席者の障がいの特性にあったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。

(ルール・慣行の柔軟な変更の具体例)

○順番を待つことが苦手な障がい者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。

○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、障がい者の順番が来るまで別室や席を用意する。

○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。

○車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。

○庁舎等の駐車場等において、障がい者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障がい者専用とされていない区画を障がい者専用の区画に変更する。

○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張により、発作等がある場合、障がい者に説明の上、施設の状況に応じて別室を準備する。

○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障がいのある委員の意思疎通や理解を支援・援助する者の同席を認める。

(法令の規定に基づく資格試験等を実施する場合の具体例)

○試験案内及び申請書等において、配慮する内容の明示、対応が可能な配慮事項を掲げた配慮事項希望欄を設定する。

○点字、拡大文字による試験問題及び解答用紙を提供する。

○車いすで使用できる机を提供する。

○試験室までの介助者の同伴を認める。

○試験時間中の服薬等を認める。

○障がいの特性により集団の中で試験を受けることができない場合に、別室での受験を認める。

○試験会場は、車いす使用者用トイレを備えた施設とする。

○試験会場の出入口等の段差を解消するためのスロープを設置する。

○車いす使用者など配慮が必要な人のための駐車場を用意する。

第7 その他(用語解説)

○社会的障壁

障がい者にとって日常生活や社会生活を営む上で支障となることがらを指す。社会における事物(通行、利用しにくい施設、設備等)だけでなく、慣行(障がい者の存在を意識していない慣習、文化等)や観念(障がい者への偏見等)も含む。

○障害者の権利に関する条約

障がい者に関するはじめての国際条約として、平成18年12月に国連総会で採択され、わが国は平成19年9月に条約に署名を行い、その後、条約の批准をめざして、必要な国内法の整備を進め、それらの準備を経て、平成26年1月に条約を批准、平成26年2月からわが国においても条約の効力が発生している。

○社会モデル

障がいは個人の能力障がい、機能障がいに起因するものではなく、社会の障壁によって作り出されるものであるという考え方(社会の障壁には道路・建物などの物理的なものだけではなく、情報や文化、法律や制度、さらには市民意識上の障壁等も含まれる)で、わが国の障害者制度改革のベースとなっている権利条約の基本的な考え方。これに対して、個人に起因するという従来の概念を医学モデルという。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に基づく職員の対応に関する要領

平成28年3月22日 訓令第7号

(令和2年7月31日施行)